街を行くタトゥーの持ち主に、その一つひとつに込めた話を聞くTATTOO TOUR TOKYO。このジャーナルには、SNSの短い動画に入りきらなかった話まで、撮影した素材から書き起こして載せています。今回の相手は、ロックバンド・ジュウでボーカルとギターを務める髙浪凌さん。2026年4月、緑の植え込みの前でジャージの上着を脱いでもらい、お腹から胸、両腕まで、全身のタトゥーを一つずつ見せてもらいました。
全身のタトゥー一覧
| 部位 | モチーフ | 意味 | 彫った人 |
|---|---|---|---|
| 肩 | 「自由」の文字と鶴 | バンド名と、地元の釧路 | ― |
| お腹 | 「超渋言夢上」 | 言葉の力で夢に上がる。30歳の決意 | ― |
| お腹 | 「03」 | あと3年働く、あと3回多く | 釧路の彫り師 |
| 胸 | 「1995戰」 | 生まれた年と、戦う | ― |
| 鎖骨 | 「釧路」、祖母の名字、「火日東京」 | 地元と家族、火を燃やして生きる日々 | ― |
| 胸 | 「浪」と家族の名前 | 名字の一字。自分で書いた字 | ― |
| 胸 | 左右の炎 | 炎を燃やしていく | SHUNさん(対になるよう手直し) |
| 肩 | 彫り師の店のロゴと「PUNK AROUND THE WORLD」 | 出会いのイベントと、彫り師の店 | SHUNさん |
| 腕 | 龍 | 歌っている自分をにらむ目 | SHUNさん |
| 腕 | キリン | 向ける先が決まるまで、目は入れない | ― |
| 右腕 | 日付と干支の文字 | 目標ができた日 | ― |
| 腕 | 「Attendre et espérer」 | 待て、しかして希望せよ | ― |
| 肩 | お守りの中の波と夕日 | 釧路の海。お守りのような人間に | ― |
| 腕・手 | 「十」のトライバル | バンド名。家の絨毯の模様から | ― |
| 腕 | 赤いピストルの手のマーク | 銃 | ― |
| 腕 | 太陽、炎、灯台、水色の鳥 | 若いころ、お任せで入れたもの | 北海道などの彫り師 |
ジュウは、北海道・釧路にルーツを持つ3人組のロックバンドです。2018年に「タカナミ」として活動を始め、2021年に改名しました。髙浪さんはボーカルとギターを担い、曲を書きます。お腹から首まで漢字が並ぶ体を、取材のあいだ、ジャージの上着の下から何度も見せてくれました。
――このタトゥーは何ですか?
僕はジュウっていうバンドをやってて。銃と自由のダブルミーニングなんです。言葉の力とか、口頭じゃないですけど、それで撃って、言葉を撃って、自由になりたいよねっていう。
――表記はどっちなんですか?
カタカナですね。カタカナの名前で、ジュウで、ダブルミーニングで自由。
腕と手には、「十」の字をかたどったトライバルがあります。これもバンド名です。
――「十」は、バンドを組んでから入れたんですか?
そうです。バンド組んでから入れましたね、後から。家にある絨毯の模様がすごい可愛くて、その絨毯の模様でトライバル作ってます。
――絨毯で「十」ですか。
確かに。絨毯で十だ。今わかりました。今気づいた。繋がらなくてもいいところが、今繋がったっていうか。
バンドの曲には、髙浪さんが育った町の話が何度も出てきます。
改造車の先輩にボコボコにされたっていう曲とかがあるんですよ。実話ですね。基本、結構良くない言葉がすごい飛び交ってるようなバンドやってるんですけど、ちょっと機会あったら聞いてほしいです。
肩には、縦長の札のような枠。その中に赤い太字で「自由」の2文字があり、あいだを一羽の鶴が飛んでいます。枠のまわりは、黒くうねるトライバルの線です。
――肩の文字は何ですか?
僕、ジュウってバンドやってて。そのバンド名ですね。自由をそのまま入れました。これはかなり気に入ってますね。
――鶴が描いてあるんですか?
はい、出身が北海道の釧路ってところなんで。そこから、このバンドを引っ張っていけたらいいなってことで。めちゃくちゃかっこいいバンドやってるんで、ちょっと背負おうかなと。肩にも思いっきり。
釧路の湿原は、国の特別天然記念物タンチョウの生息地です(北海道新聞)。
――赤にしたのは理由があるんですか?
色のバランスですね、完全に。ほとんど真っ黒なんで、差し色で赤をポイントポイントで入れて、ちょっと人より目立ちたいなと思って赤にしました。
黒い線の中に、赤だけが点々と灯る。全身を通して、髙浪さんのタトゥーはこの配色でそろえられています。
みぞおちからへそへ、縦一列に並ぶ5文字。「超渋言夢上」。辞書には載っていない言葉です。
――お腹の文字は何ですか?
これ、自分で作った言葉なんですけど。超渋く、言葉の力で夢の上に上がるっていう。好きなバンドの、仲良くなった先輩の名前も一文字入れさせてもらって。本当にこういうふうに生きていこうっていう、30歳になったばっかりの時に、気合い入れていこうかなって感じで入れました。
――読み方は?
いや、もうこれは読み方まで考えてなくて。ちょっと読み方は今後考えていこうかなと思って。
体の真ん中に、一生の方針を縦に書く。入れた場所は、全身でいちばん痛かったところでもあります。
めっちゃ痛かったです、ここ。腹が一番痛かったかな。
お腹は皮膚が柔らかく、彫られるあいだに力を逃がしにくい部位です。部位ごとの痛みの違いは部位別のタトゥーの痛みにまとめています。
「超渋言夢上」のすぐ下、へその下に、小さく「03」。これが髙浪さんのファーストタトゥーです。
――03は何ですか?
これマジでやばいんですけど、高校3年生の時に、あと3年仕事するぞっていう。とりあえず3年は仕事しようっていう。あと、腹筋とか筋トレの時に、あと3回多くやるっていう、謎の、意味のわからない入れ方をしちゃって。3年は仕事やったんですけど、3日で辞めればよかったなと思いました。
――なぜ0を付けたんですか?
3だけだったら、なんかちょっと。高校生なんで、いっぱい入れたいんで、無駄なところに入れたかったんで、0って入れて。地元で入れたのは初めてですね。
入れたのは地元・釧路の、年配の彫り師でした。高校を出てからの3年間、髙浪さんは介護の仕事を続けています。お腹の「3」を見るたびに、筋トレの回数も、仕事の年数も一つずつ足してきました。
――最初にお腹を選んだのは?
痛めのところに行きたいと思って。
高校生の時、すごい頭悪い高校だったんですけど、自分をちょっと強く見せたかったのかもしれないですね。タトゥーを入れた俺、みたいなところが多分欲しかったんだと思う。入れてからずっとお腹見てましたよ。チラチラチラチラ。
痛い場所をあえて選んだ髙浪さんですが、痛みに強いわけではありません。
――痛みは平気なほうですか?
僕、痛いの本当に苦手なんですよ。たまにタトゥーって気持ちいいって言う人いるじゃないですか。気が狂ってるなと思ってて。でも僕、いつも痛みに強いって思われてるんです、彫り師さんに。いつもポケットに手を突っ込むんですよね、痛すぎて。もう拳を握りしめてるんですけど、ポケットに手突っ込んでるから、こいつ余裕なんだなって思われがちで。痛くてポケットの中で手が震えてるだけなんですよ。
――痛いと言えないのはどうして?
カッコつけてるからですね。ブルブル震えて、拳だけ。全てはこの拳に。でも、痛くないと入れる意味もないなと思うので。痛いのは嫌だけど。
手のひらは汗だくで、トイレに立つ回数で、そろそろ彫り師にばれ始めている。そう笑いながらも、痛みを抜く方法を探すつもりはありません。
胸の下には、ブラックレターの数字と旧字体で「1995戰」。
――この1995は?
僕が1995年生まれなんで。戦っていうのは、もう戦う。僕、戦うモチベーションが高いんで、もうちょっと戦うぞっていう意味で入れました。シンプルに。
鎖骨に沿って、もう一列、漢字が横に流れています。
――鎖骨の文字は何と書いてあるんですか?
釧路っていうのが僕の地元で。あとは、ばあちゃんの名字。あと「ひび東京」。日々って、毎日過ごしていく日々もあるけど、火を燃やして生きるっていう意味で。毎日火を燃やして生きていく。ちょっと造語なんですけど。僕らのバンドにも、こういう曲があるんです。
――首まわりに漢字を入れたのは?
首に漢字いいなと思って。今タトゥー入ってる人多いんで、ここでなんか個性というか、出せたらいいななんて。
鎖骨の下、右胸には、太い筆で書いたような「浪」の一字が、筆記体の英字に囲まれています。
これは家族の名前です。波は、僕、髙浪って名字なんですけど、髙浪の浪です。自分で書いたんですけど、めっちゃ自分で書いた文字下手すぎて。そのうち綺麗にかっこよくしてもらおうかなと思ってますね。
胸の左右には、黒い炎と赤い炎。もともと入っていたものを、いまの彫り師が対になるよう手を入れました。
これはもう炎ですね。炎燃やしていこうっていう。僕自身、割と自分で焚き付けないと燃えない人なんで、いつも鏡で思い出すようにしてますね。もっと毎日を燃えながら生きたいなという感じで。
反対の肩には、錨を真ん中に据えた丸いロゴ。「HOMEWARD TATTOO PARLOR」の文字が円を一周しています。神奈川・横須賀のタトゥースタジオ、Homeward Tattoo Parlorのロゴで、彫っているのはSHUNさん。いま髙浪さんの体に入る新しいタトゥーは、ほとんどがSHUNさんの手によるものです。
――お気に入りのタトゥーは?
まずここ。自分のことを彫ってくれてる彫り師のロゴですね。この人に任せるってことで。肩で、広告塔になろうと思って。
その隣に、もう一つ文字のタトゥーがあります。「PUNK AROUND THE WORLD」。
――SHUNさんとはどうやって出会ったんですか?
きっかけはイベンターの人が紹介してくれて。おそろいのタトゥー入れようぜってなって、イベントの関係者みんなで、おそろいで入れたんです。PUNK AROUND THE WORLDっていう、バンドが世話になってるイベントで。その流れで話して、結構この人だなと思って。俺でかくなるんでお願いしますって、変な啖呵切っちゃって。かっこよくしてくださいって。
イベントの名前と、彫り師の店のロゴ。二つが並んで、ひとつの出会いを記録しています。
この人がいて、これができてるっていうので。
腕には、黒い線で描かれた龍と、黄色や青が差されたキリン。髙浪さんがSHUNさんに通い続ける理由は、この2頭の「目」にあります。
――龍は何ですか?
今の彫り師が、意味をすごい大事にしてくれるんで。この龍だったら、目で俺を睨んでくるから。音楽やってる時、目の向きとかまで結構考えてくれるんですよ。ボーカルでギター弾いてる時に見ると、ちょっとピリつかない?みたいな。
――キリンは?
こっちは、何に目を向けるって言われた時に、まだ向き先が定まってなかったんで、今まだ目を入れてないです。
全体は黒のトライバルで、そこに目立つ色を差すのが髙浪さんのスタイル。もう一方の腕に昔から入っていた黒いトライバルも、そのすき間にSHUNさんが龍を入れ直しました。
隙間って、額を入れるじゃないですか、よく。その隙間にトライバルを入れて、龍を入れるっていう、結構斬新なアイディアで。竜の尻尾からこう巻いて。でも、こっちを睨んでる。常にお前を見てるぞっていう意味をちょっとつけてみました。
右腕にだけは、長いあいだ何も入れずにきました。そこに最近、日付が入りました。
――この腕は何ですか?
自分の中で、右手ってあんま入れてなかったんですけど。バンドマンとしてというか、人として目標ができたんで、この目標ができたタイミングで、この日を忘れないように。言葉っていうか、もうただその日だけを入れたって感じですね。文字はその年の干支。完全に今年なんですけど、これ。
――右手に入れたのは?
右手は入れないでおこうと思ってたんですけど、ちょっといろいろと決まったんで、心が。ちょっと入れようと思って。
日付は、とにかくわかりやすい数字で。どんな目標なのかは、取材では明かしませんでした。
肩から二の腕へ、ブラックレターの3語が斜めに下りていきます。「Attendre et espérer」。
――この文字は何ですか?
ちょっと読み方忘れちゃったんですけど、待て、しかして希望せよっていう。要は、ちゃんと耐える力を持って待ち続けろと。でも希望は捨てるなっていう。モンテ・クリストっていう、小説とか映画とかになってるのがあるんですけど、それの名言ですかね。好きな言葉なんですよ。
アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』は、「人間の知恵はすべて、待て、しかして希望せよ、の二語に尽きる」という一文で終わります(Wikipedia)。無実の罪で長く投獄された男の物語の、最後の言葉です。
耐え抜きながら、希望は捨てるなって。
胸の脇、肩に近いところに、赤い紐で結ばれたお守り袋。中には、うねる波と、雲のあいだの赤い太陽が描かれています。
――これは何ですか?
これはもう地元ですね。本当に、波と夕日がすごい綺麗な街です。生まれたので。お守りみたいな人間になりたいなと思って。自分自体が、お守りみたいになれる存在になれるように入れましたね。
釧路の夕日は、マニラ湾、バリ島と並ぶ「世界三大夕日」の一つとして知られています(国土交通省北海道開発局)。
お守りのそばには、龍の足もあります。
やっぱ龍好きなんで、めちゃくちゃ龍。龍に捕まえられてるような感じというか。
もう一方の腕には、太陽、炎、灯台、水色の鳥。どれも若いころ、北海道などで入れたものです。赤いピストルの手のマークは、バンド名の「銃」です。
――この黒いのは何ですか?
これも、なんで入れたかわかんないですよね。入っちゃってたっていう。こっちは本当に、かっこつけて入れたものが多くて。昔から自分を強く見せるために入れたようなものも多いんで、これも背負っていきたいなとは思ってます。
高校を出て介護の仕事を3年続けたあと、髙浪さんは地元を出て東京へ向かいました。
――東京に出たのはどうしてですか?
地元の上下関係とか人間関係で、先輩に車貸せとか言われたりとか、そういうのが続いて、もう嫌すぎて。こいつらより悪くなってやろうと思って東京に出て。東京に出て、全然良くない仕事をして、2回警察に捕まってるんです。その時に、強く見せるために、何でもいいんで増やしてくださいみたいな感じで入れてたのが、さっき意味を言えなかったタトゥーで。
執行猶予の期間は、もう終えています。
――そこからバンドに?
本当に悪くなれないんだなって、気づいたんですよね。それで、こういうタトゥーも入ってたし、お前面白いじゃんって、お前バンドやればって言ってくれる人たちがいて。ギターも弾けたんで、やってみようと思って。そこからタトゥーの入り方が変わったんです。
――昔のタトゥーは、消そうとは思わない?
歴史なんで、残してますけど、全部。
水色の鳥は、仲間内で「Twitterの鳥」とからかわれます。灯台は、別のものに見えると言われるので、先に自分から言うことにしている。そう話して笑いました。
意味のあるタトゥーって大事にできますね。こっちの腕を見ると、やっぱりなんかカッコつけてたなって思います。で、今はバンドでも、こういうことを歌詞に書いて。
――タトゥーを入れてよかったことは?
やっぱり、頑張る意味みたいなのは自分の中でできましたね。保存するというか、その時の自分の考えとかを、改めて見た時に、ああ、こういう意味あったんだって。特に今の彫り師が、だいぶ意味をつけてくれるんですよ。この目をどこに向けたいかとか、細かいとこまで聞いてくれるんで。今俺、このタトゥー入れた時期にちょっと目を背けてんなって思ったら、そこに向けて目を向けたりとか。すごい細かい意味を全部一緒に作ってくれるんで。だから、タトゥー彫りに行ってるっていうよりかは、人生相談に行ってるって感じですかね。
――タトゥーと人生がつながる、というのは?
自分もライブの目標とかあるんで、今年これやろうとか、そういうのを彫り師に言った時に、じゃあお前これクリアできてるじゃんみたいな。じゃあこいつ、その先を見てるじゃんって、この龍は、みたいな。次これ入れたいんだったら、ここまで頑張んなきゃダメだよねっていう話もやっぱりしますね。そういうのが、自分の人生とタトゥーが繋がるって感じですかね。
SHUNさんは、和彫りを手がける彫り師です。
和彫りの彫り師さんなのに、和彫り和彫りしないほうがいいよみたいに言ってくるんですよ。本当に好きにいっぱい入れててほしいから、今後後悔してほしくないから。
横須賀の店では、彫っているあいだにも、アメリカ軍の基地から来た客が酒を手に入ってきたり、犬を連れた女性が顔を出したりします。
関係ない人がずっと見てて、話しかけてきたりして。なんか面白いですよ。カルチャーみたいな感じで。楽しいです、すごく。
それから一つ、入れてよかったことがもう一つ。
絡まれなくなったですね。僕、ヒョロヒョロしてるんで。夏場は絡まれないですけど、冬は絡まれるんですよね。だから、そういう意味では護身用になってるのかなと思って。情けない話ですけど。
――次に入れたいものは?
肩のあたり、すき間をオシャレに埋められたらいいなって思って。あんまり和彫り和彫りさせたくないんです。そこまで行き切ってる不良とかじゃないから、威嚇するものになりたくなくて。オシャレになるようにはしたいなと思ってますね。あと、背中には最終的に、家族の名前をバーって入れるつもりではいます。ばあちゃんの名前とか、ドーンって大きく。
取材の3日後、2026年4月17日。髙浪さんはステージでギターを鳴らし、マイクの前で叫んでいました。翌月の5月27日、ジュウは全22曲のフルアルバム『不自由で、自由』を発表しています(Mikiki)。
稼げてなくても、やっぱり、魂、好きなことするのいいなと思いますね。これからバンドマンとして、やっていくっていう感じで。
| 彫り師 | 彫ったタトゥー |
|---|---|
| SHUNさん(横須賀・Homeward Tattoo Parlor) | 店のロゴ、「PUNK AROUND THE WORLD」、龍、胸の炎の手直しなど、最近のほとんど |
| 釧路の彫り師 | ファーストタトゥーの「03」 |
| 北海道などの彫り師 | 太陽、炎、灯台、水色の鳥など、若いころのタトゥー |



