街を行くタトゥーの持ち主に、その一つひとつに込めた話を聞くTATTOO TOUR TOKYO。このジャーナルには、SNSの短い動画に入りきらなかった話まで、撮影した素材から書き起こして載せています。今回の相手は、東京・中野でまつげと眉毛のサロンを営むあきこさん。2026年2月16日、渋谷PARCOの屋上で、黒のセットアップの裾をまくりながら、脚と胸と腰のタトゥーを一つずつ見せてもらいました。
全身のタトゥー一覧
| 部位 | モチーフ | 意味 | 彫った人 |
|---|---|---|---|
| ふくらはぎ | 足に巻きつくリボン | ヴィヴィアン・ウエストウッドの靴。絆 | マグヌスさん |
| すね | ウサギ | 卯年。幸福を呼ぶウサギ | マグヌスさん |
| 膝の上 | 口紅と「MILK」 | 読者モデル時代の名前。愛の象徴 | マグヌスさん |
| 太もも | さくらんぼと「No Pain No Gain」 | 美容業を一生やる | マグヌスさん |
| 胸 | イチゴと「le vent heureux」 | 幸せな風。息子さんの名前から | マグヌスさん |
| 腰 | 矢の刺さったハート | ファーストタトゥー。これから先も頑張っていく | マグヌスさん |
右のふくらはぎに、黒い蝶結びがひとつ。そこから垂れたリボンが、すねを斜めに横切りながら足首のほうへ巻き下りていきます。色は黒とグレーだけ。スニーカーと靴下のあいだから、リボンの端がのぞきます。
――リボンを選んだのはなぜですか?
なんか足に巻きつけたいなと思って、それでリボンを。ヴィヴィアン・ウエストウッドのロッキンホースバレリーナってわかります? あの靴を私、昔ずっと履いていて。片足にそれみたいなのを彫りたいなと思ってやったので。
ロッキンホースバレリーナは、木のブロックのような厚底に、足首まで巻き上げるリボンが付いたヴィヴィアン・ウエストウッドの靴です。1985年に発表され、ブランドを代表する一足になりました(WWDJAPAN)。
――知っている人が見たら、おっと思うわけですね。
そう。でも、みんな気づかないかな。足に巻きつけて、ファッションの一部にしたいと思って。
――フラッシュ(彫り師が用意した図案)ですか?
持ち込みで、ちょっとおまかせでやってもらいました。Pinterestとかで見て。5万ぐらいですかね。4時間ぐらいかかったかな。
値段は本人の記憶で約5万円。6つのなかでいちばん大きなタトゥーです。リボンには、もうひとつ意味を重ねています。
リボンが、大切な人たちを失いたくないっていうので、絆っていう意味もあって入れました。
足もっと出してましたね。タトゥーをちょっと見せてた気がします。最近見せてないですけど。冬寒くて。
リボンと反対の脚、すねの外側には、白いウサギが跳ねています。耳の内側はピンク、目と足先に赤。本人いわく「ちょっと和っぽい感じのウサギちゃん」です。
――ウサギは卯年だからですか?
そうです、卯年。だからウサギを彫りたいと思って。あと、レッドバニータトゥーさんで彫ったんですけど、ウサギを彫るなら絶対そこって思ってて。
彫ってもらったのは、吉祥寺のRed Bunny Tattoo。名前に「バニー(ウサギ)」を持つスタジオで、卯年のウサギを入れる。あきこさんにとっては、これ以上ない組み合わせでした。
――これはフラッシュでしたか?
マグヌスさんに、その日にこういう感じがいいって言って描いてもらって、3種類ぐらい書き起こしてもらって、その中から選びました。目が赤いのが可愛い。
目の赤はスタジオの名前から来ているのでは、と聞くと「そうかもしれない。足も赤いし」。値段は「2万円でした」。撮影の後半には、このウサギを「幸福を呼ぶウサギ」と言い直しています。
膝のすぐ上には、赤い口紅。その横に、筆記体の文字が添えられています。
――なんて書いてあるんですか?
ミルク。KERAっていうファッション雑誌が昔あって、その時の私の名前がミルクって名前でやってたんで、絶対将来入れたいなと思って名前を入れました。読者モデルみたいな感じで、ちょっとだけ出てました。
KERAは1998年創刊の原宿系ファッション誌で、2017年に紙の雑誌としての発行を終えています(モデルプレス)。
――なぜ口紅と組み合わせたんですか?
口紅でやった理由、なんだろう。なんか愛とか、そういう感じだった気がする。愛の、なんか、象徴みたいな。
値段は本人の記憶で2万円ほど。
太ももの上のほう、普段は服に隠れる位置に、二つ実のさくらんぼがあります。軸の付け根には黒いリボン。その上に「No Pain No Gain」の一行が弧を描きます。
――この言葉を選んだのは?
痛みなしでは得られない、っていう。美容師になりたいと思って、社会人になってから美容学校に入ったんですよ。で、絶対辞めないぞっていう、そんな象徴ですかね。美容業を一生やるっていうのを、ここに刻んでみました。
――さくらんぼにしたのは?
さくらんぼも、なんか繁栄とかだったかな。これから先頑張っていくのに、確かさくらんぼってラッキーポイントみたいなのだった気がする。
撮影の後半には、スマートフォンのメモを見返しながら意味を挙げています。「無垢、純粋さ、幸運、あと情熱、愛情」。さくらんぼのタトゥーには一般に、無垢・純粋・愛情といった意味が重ねられます(LUCKY ROUND TATTOO)。
――ここにもリボンが付いていますね。
そう、リボンが好きですね。
値段は本人の記憶で2万円ほど。
胸の中央には、赤いイチゴが二つ。片方は縦に切った断面で、果肉の白い筋がハートの形になっています。その下に、小さな筆記体で「le vent heureux」。
――英語ではないですね。
これはフランス語です。幸せな風っていう意味で。息子の名前に「風」の字が入っているから、幸せな風を吹いてほしいっていうので、ちょっと胸に入れてみました。これも愛の象徴ですね。ハート。
イチゴの赤と葉の緑に比べて、文字の黒は少し薄くなっています。本人も「消えちゃってますね、ここ」と笑います。
――なぜイチゴなんですか?
イチゴ、好きじゃないんですけど、別に。味は好きじゃないんですけど、見た目のイチゴが好きで。このつぶつぶに、この断面図。可愛くないですか? イチゴ好きじゃないけど、イチゴのもの買っちゃうみたいな。
イチゴのタトゥーは一般に愛や幸福を表すとされます(LUCKY ROUND TATTOO)。あきこさんのイチゴは、まず断面のハートのためにあります。
最初のタトゥーは、腰の横。赤いハートを、一本の矢が斜めに貫いています。6つのなかでいちばん古く、輪郭の黒はやわらかくにじみ始めています。
――ファーストタトゥーを腰にしたのは?
一番痛くなさそうかなって思ったのと、あんまり見えないところに入れたかったので。腰が一番、女性も入れやすいところなのかなと思って、腰に入れてみました。
――ハートに矢を選んだのは?
これからいろんな道を乗り越えていくっていうので、確かハートに矢が刺さったのを入れました。これから先も頑張っていくっていう意味で。20代前半ぐらいに入れました。
部位ごとの痛みの違いは部位別のタトゥーの痛みにまとめています。
このハートにも、小さなリボンと数字の「69」が添えられています。
――69は何の数字ですか?
当時の私の、ムクっていうあだ名です。無垢のムク。ムクムクしたもの、モコモコしたふわふわしたものが好きだったから、兼ね合わせてムクって。ムクちゃんって呼ばれてた。
6と9で「ムク」。値段は本人の記憶で2万円ほど。
6つのタトゥーはすべて、吉祥寺のRed Bunny Tattooで、同じ彫り師に入れてもらったものです。値段はリボンが約5万円、ウサギが2万円。残りの4つについては、あきこさんの記憶では「全部2万円だった」「多分2万円だったと思う」。
――彫り師さんはどなたですか?
レッドバニータトゥーという吉祥寺にあるお店の、マグヌスさんという男性の彫り師さんです。スウェーデン人の。もうファーストタトゥーからずっとその方にお願いしてます。十年以上です。
Red Bunny Tattooは2005年に吉祥寺で開いたスタジオです(Red Bunny Tattoo)。撮影中、あきこさんはスマートフォンでマグヌスさんのInstagramを開いて見せてくれました。
――どんなタトゥーを彫る人ですか?
結構こういう感じのタトゥーです。不思議。この人が描く絵は基本的にこういう系で、多分元々こういう絵を描いていて。タトゥーはいろんなのを彫る。キャラものも彫るし、リアルなのも彫るし。いろんなのが得意。
――選んだきっかけは?
専門学校の時の女の子に紹介してもらって。マグヌスさんがたまたま空いていて、頼んだ感じです。絵のタッチも好きだったので。紹介してもらったのはスタジオだけで、彫り師さんは絵のタッチで選ぶ感じですかね。
――ほかの彫り師さんに頼んだことは?
私は彫り師さん一人しかいない。浮気できないんで。浮気しないんで。
――タトゥーを入れたきっかけは?
なんかこう、人生いろいろあったので。専門学校に入ると同時に、ちょっと頑張ろうと思って、乗り越えるためにタトゥーを入れました。一回社会人になって、美容業をやりたいなと思って。それをきっかけにタトゥーを入れようと思って。そしたら、どんどん増えました。今後も増える予定です。
その決意が腰のハートになり、太ももの「No Pain No Gain」になりました。いまは地元の中野で、まつげと眉毛のサロンを経営しています。
中野でお店を出したくて。念願のお店を出しました。
――タトゥーを入れてよかったことは?
好きなものを入れてるので、好きなものがずっとそばにいてくれるっていうのと、体の一部にカラーが入ってることがファッションの一部になって。人生変えてくれたかな。他と違うことが好きなので。
――ファッションで色がある、ってどういう感じですか?
人間って、裸になると肌色じゃないですか。そこに色が入ることによって、その人の色になるっていうか、その人のカラーが出来上がるみたいな。ピンクとか赤とか黒がやっぱり好きなので、自分もそういうカラーにしたくて、タトゥーもそういうのに寄せて入れてみました。
赤い口紅、赤いさくらんぼ、赤いイチゴ、赤い目のウサギ。そして黒のリボン。脚と胸に散らばる6つは、本人の好きな色でそろっています。
――タトゥーがあるから、服を変えたりもしますか?
体に色が入ってるから、モノトーンの洋服をよく着るようになりましたね。色物はあんまり着なくなりました。アクセサリーもつけなくなった。シンプルに。
取材の日も、上下とも黒のセットアップでした。脚のリボンについては、こんな話も。
スカートとか履いた時に、ちょっとだけ見えるのが。タトゥータイツとか昔あって、あれって言われるぐらい自然な感じに見えるので。それはおすすめですよ。友達からも好評で、みんなやりたいって。
――よくなかったことはありますか?
親に内緒にしてたのがバレた時に、すごい怒られました。もう成人してたから、特に何も言われなかったですけど。それぐらいですかね。あと、プールとか温泉に入れないぐらい。別に入らないからいい。隠せば入れるから大丈夫。あんまりデメリットに感じたことはないです。
――苦手なタトゥーはありますか?
嫌なタトゥーは、ないな。やっぱり、見せびらかしてオラオラしてる人のタトゥーは好きじゃないかもしれない。ファッションの一部っていうのが私の中では強いので、見せびらかして歩くとかでもないかなっていう感じですかね。
――友達もタトゥーを入れていますか?
入れてます。結構いっぱいいますね。昔よりも全然いっぱい入れてますね、みんな。美容学校じゃなくて、バンド系の友達がみんなほぼほぼ入ってますね。ファッション系のお仕事をされてる方とか。
――次に入れたいタトゥーは?
水瓶座なので、水瓶のタトゥーとか。あと鹿。バンビみたいな、ちょっと可愛い系の。子鹿が好きなので、それを入れようかなって思ってます。どこら辺に入れようかなって。フルだったら、全身彫ってみたいですけどね。
撮影の終わりぎわには、もう一つ候補が増えました。家では爬虫類をたくさん飼っているのに、爬虫類のタトゥーはまだありません。
それも入れたいんだ、そういえば。ニホントカゲとか、アオジタトカゲを入れたい。尻尾が虹色の子。
――これからタトゥーを入れたい人に、何を伝えたいですか?
入れたいけど入れられない人、結構いるんで。みんなが入れる一歩を踏み出せればいいなって。安心できる彫り師さんを紹介していくのが一番いいですよね。
| 彫り師 | 彫ったタトゥー |
|---|---|
| マグヌスさん(吉祥寺・Red Bunny Tattoo、Instagram @deadpigeontattoo) | リボン、ウサギ、口紅と「MILK」、さくらんぼ、イチゴ、腰のハート(全6点) |
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