街を行くタトゥーの持ち主に、その一つひとつに込めた話を聞くTATTOO TOUR TOKYO。このジャーナルには、SNSの短い動画に入りきらなかった話まで、撮影した素材から書き起こして載せています。今回の相手は、原宿のサロンで働く22歳の美容師、miyuさん。2025年12月23日、街頭で、胸から腕、背中まで、黒一色のタトゥーを一つずつ見せてもらいました。
――タトゥーはどこに入れていますか?
両腕と胸と、あと背中と。腰にも入りました。首の後ろにも。上半身は結構入ってます。下は、足とかは全然入ってない。
全身のタトゥー一覧
| 部位 | モチーフ | 意味 | 彫った人 |
|---|---|---|---|
| 胸 | 百合 | 聖母マリアの花。子どものころから大事にしてきたもの | ルナさん |
| 右の手首 | ハサミ | 美容師になる決心 | ― |
| 左の手首 | バレエシューズ | 3歳から続けたバレエ | ― |
| 両肩 | 白鳥と黒鳥 | 『白鳥の湖』の憧れの役 | ― |
| 左腕 | 妖精 | 何度も踊った妖精の役 | ― |
| 腕 | 貝と真珠 | 自分が踊った真珠の役 | ― |
| 腕 | 犬と名前、数字 | 飼っている犬と、その誕生日 | ― |
| 腕 | ヘビ | 縁起がいい | ― |
| ― | 羽 | ファーストタトゥー | ― |
| 左の肩〜腕 | 百合と十字架の曲線 | 制作中。お任せで続けている | ― |
| 腕 | 蜂 | Diorのアトリエの職人 | ― |
| 背中 | 4つのバラ | 頑張りが咲いていく | ― |
| 背中 | 英文の歌詞 | 『シンデレラ』の曲。言葉は秘密 | ― |
| 肩甲骨 | 「666」 | 救ってくれる数字 | ― |
彫った人の欄が「―」のものも、本人の言葉では「1、2個違う人なんですけど、基本的にその方に」。大半は同じ彫り師の手によるものです。
胸の中央、鎖骨の下に、左右対称に組まれた百合が広がっています。花と葉と細い曲線が、教会の装飾のように胸元を横切る。撮影の日のmiyuさんは、その下に大きな黒い十字架のネックレスを下げていました。
――いちばん推したいタトゥーは?
ここですね、やっぱ。この胸の百合のタトゥー。一番大きいし。百合です、ちっちゃめの百合ですけど。
――どうして百合を入れたんですか?
聖母マリアの象徴っていうか、そういうお花で。自分の幼少期の、結構大事にしてるところを入れました。小学校、中学校がキリスト教の学校だったので、そこで学んだこととか、今になって思うことが結構あるので。聖母マリアのお花が百合の花だったんで、それで入れました。
白い百合は、聖母マリアの純潔を表す花とされています。天使ガブリエルがマリアに受胎を告げる「受胎告知」の場面とも結びついてきた花です(みんなのタトゥー)。
――胸に入れた理由は?
入れようと思って。結構大きく入れたかったので、彫り師さんと相談して入れました。
値段は「だいぶ前であんま覚えてないんですけど、多分3、4万とかだった気がします」。
――彫り師さんはどんな方ですか?
ルナさんっていう、個人でやってる女性の方で、いつもその人に入れてもらってます。仲良くて、プライベートでも時々会います。
右の手首の内側には、柄に飾りの付いたクラシックなハサミ。左の手首には、リボンを結んだトウシューズが一足。
――手首のタトゥーは?
手首のタトゥーもお気に入りで。ハサミは、4月から美容師で、決心として入れてます。
――反対側はバレエシューズですね。
そうです。バレエは10年ちょっとぐらい。3歳とかなんで、ほぼ親が連れてってくれて始めたって感じです。でも今でも大好きなので、それで入れました。
――この二つを手首に入れた理由は?
あんまり人生でハマるものがなくて。唯一この二つはすごい大好きなもので、自分が頑張るって決めたことがこの二つだったんで、それで入れました。
値段は一つずつで「大体多分1万前後」。
miyuさんは美容学校を出て、2025年4月から原宿のサロンで働いています。取材のときは、まだアシスタントでした。
憧れのサロンだったので、働けるのは嬉しいです。
百合も、ハサミも、鳥も、すべて黒の線と影だけで彫られています。
――全部黒で統一しているんですか?
そうですね、カラーは入れてないです。ちょっと飽き性なので、彫り師さんにも、多分やめておいた方がいいよ、飽きちゃうと思うって言われて。普段のファッションが黒ばっかなので、今日はたまたま色があるんですけど、あんまカラーって感じじゃないので、白黒で。
――全体のテーマはありますか?
テーマっていうか、洋風なもの。昔の王室とか、ちょっとゴシックな感じが好きなので、そういう雰囲気で。曲線っぽい感じの方が好きなので、結構くるくるして。
撮影の日も、ベージュのワンピースに黒い十字架、網タイツに黒のロングブーツでした。
両肩には、2羽の鳥がいます。
――このタトゥーは白鳥ですか?
黒鳥です。こっちにも。これもバレエの、好きな作品で入れました。
――バレエで白鳥というのは?
チャイコフスキーの作品で有名なのがあって、三大バレエ作品みたいなのがあって。憧れの役なので、それで入れました。
『白鳥の湖』では、呪いで白鳥の姿に変えられた姫オデットと、王子を惑わす悪魔の娘オディール、いわゆる黒鳥を、一人のバレリーナが踊り分けるのが一般的です。清らかな白と妖しい黒。対になる二役が、miyuさんの左右の肩に分かれて入っています。
白鳥の値段は「多分2、3万」。
左の前腕、バレエシューズの少し上に、羽を広げた妖精がいます。まわりを細い線の星や渦が取り巻いています。
――このタトゥーは?
妖精のタトゥー。これもバレエで、妖精の役を結構踊ったので、それで入れました。彫り師さんがめちゃくちゃアレンジしてくれて、ここもフリーハンドでやってくれて。お気に入りです。
――どうやってお願いしたんですか?
みんなが入れてるような見本みたいなのが、本当にあんまなかったので、妖精入れたいって言って。あとはもうデザインとか、ほぼ彫り師さんがやってくれました。
腕には、口を開けた貝の中に真珠が一粒、という図柄もあります。
――これは何ですか?
真珠。貝が開いてて、真珠が中にあるんですけど、これもバレエで。自分が踊った役の、真珠の踊りがあって、それで入れました。
真珠の値段は「1万、2万ぐらい」。
バレエ以外のタトゥーもあります。腕の内側には、丸い耳の子犬の顔。上に筆記体の名前、下に数字が並びます。
――これは何ですか?
飼ってる犬です。クマってよく言われるんですけど。ちっちゃいときの写真を、彫り師さんがタトゥーにしてくれました。
――数字は?
生まれた年と日にちを。上は名前ですね。
その下、肘の近くには、体をくねらせたヘビが1匹。
――ヘビはなぜ入れたんですか?
結構最初の方に入れて。なんか縁起が良くて。何入れようかなと思って、入れました。
――ファーストタトゥーは?
羽のタトゥーが入ってます。フェザー。それが最初です。
左の肩から二の腕へ、細い線の唐草と百合、十字架がつながっていきます。首の後ろから肩にかけても、同じ曲線が伸びています。
――肩にも入ってるんですか?
そうです、続いてます。今途中なんですけど、ここまで入れました。
――これも彫り師さんと相談して?
入れたいお花と、十字架入れたいっていうのだけ言って。あとはもう全部お任せで、彫り師さんがやってくれて。
――これも百合ですか?
百合です。好きですね。特にお花が大きいのとか。
前腕にある模様も、この続きです。「これは上の続きで、まだ繋がってないんですけど、どんどん繋いでいきます」。
腕には、蜂も1匹とまっています。
――蜂はなぜ入れたんですか?
服を好きになったきっかけが、ディオールのオートクチュールのコレクションを中学生のときに見たことだったので。ディオールの、その作る人のことをミツバチって呼んでるので、結構象徴で、それを入れました。
クリスチャン・ディオールは自分のメゾンを巣箱にたとえ、モンテーニュ通り30番地のアトリエで働く職人たちは「蜂」と呼ばれていました(Harper's BAZAAR Malaysia)。
背骨に沿って、小さなバラが4つ。上から下へ、だんだん花が開いていきます。
――背中のバラは?
どんどん咲いていってる感じです。画像を見てて可愛かったのもあるんですけど、自分が頑張ってる部分で咲いていくことと、自分の頑張りが報われていくのが重なるなと思って入れました。
――入れたのは就職活動のころですか?
結構その時期にめっちゃ入れてます。
右の肩甲骨の上には、筆記体の英文が3行。
――これは何と書いてあるんですか?
歌詞で。ディズニーの、シンデレラの曲です。好きな曲を入れました。覚えてるけど、秘密で。ちょっと恥ずかしいかも。就職で一回、結構落ち込んだときがあって、そのときに自分で励ましで入れたので。
左の肩甲骨には、数字の「666」。
――666は悪魔の数字ですよね。
悪魔の数字なんですけど、エンジェルナンバーでも意味があって。救ってくれる感じ、精神的な救いっていうか、そういう意味もあるんで、それで。ここに入れたのは、バランスが良かったから。
――タトゥーを入れたきっかけは?
最初はもう、ちょっとかっこいいねぐらいの憧れで入れました。高校生のときの憧れが最初。でも今は、自分の好きなものとか、好きだったものとか、自己表現で入れてます。バレエが多いし、お花も好きなものしか入れてないし。
――入れてよかったことは?
友達はみんな可愛いって言ってくれてます。それに、やっぱりハサミを見ると、みんな美容師なんだって。大体突っ込まれます。夏とかは特に。多い方だと思うんで、やっぱり何かしら言われます。
――周りにタトゥーを入れている人は多いですか?
私が知ってる人は、結構入れてる人が多いかな。
左腕の曲線は、完成まで「いつになるかわかんない」。右側の予定を聞くと、「どうしようって感じです。でも多分埋まっていくと思う」。
――次に入れたいタトゥーは?
一旦ここの続きを埋めて、あとは足に全く入ってないんで。足に入れたいな。
バレエを本格的に離れたのは6年前。いまも時々、踊りに行きます。
――今も体は柔らかいですか?
もう硬くなっちゃいました。やってたときは毎日しっかりストレッチとかやってたけど、もうやってないので、開脚とかもできません。でも、めっちゃ楽しかった。頑張ってました。
美容師としては、取材のあと、2026年4月からカラーを担当する予定でした。
4月からカラーできるので、ぜひお願いします。来てください。
| 彫り師 | 彫ったタトゥー |
|---|---|
| 流生(るな)さん(Angel's Trumpet、神奈川・登戸のプライベートスタジオ) | 胸の百合をはじめ、ほとんど |
| ほかの彫り師 | 1〜2点 |






